クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#16【凛視点】 深夜22時の絶望的ミス!泣きそうな私に、先輩が部長まで巻き込んで見せてくれた景色

プロジェクトの肝となるイベント前日の夜。
手配が遅れ、到着がギリギリになっていた展示用のA1パネルがようやくオフィスに運び込まれた。
SNSでの拡散を狙った「会場回遊スタンプラリー」で、混雑を避けるため各所に分散配置する計60枚のA1パネル。
執務室入口付近の壁に立て掛けられた束を見て、SNSユニットのメンバー2人と私は「なんとか間に合った……」と胸をなでおろしていた。

早速、検品のために梱包を解いてパネルを確認すると——。

「……え、待って。このスポンサーロゴ、旧デザインじゃない……?」

メンバーの一人が放った言葉で、その場の空気が一瞬で凍りついた。
急いで他のパネルを十数枚確認したが、結果は同じ。恐らく60枚すべてがそうだろう。
時刻はもう22時を回っている。刷り直しは時間的に間に合わない。

「リーダー、どうしよう……」

泣きそうなメンバーを前に、私が震える手で修正案を考えていたその時。
イベント前夜の別作業で残っていた先輩が、異変に気づいてこちらに駆け寄ってきた。

「あっ……先輩……」

私はすがるように先輩を見つめた。

「話は聞こえてた。……60枚か。大丈夫だ」

先輩は短くそう言うと、素早く指示を出し始めた。

「誰か、奥の倉庫にある厚手のマットラベル紙を全部持ってきてくれ。俺は人手を集めてくる。こんな時間だから数人しか残っていないとは思うが……。りんりんは修正用のロゴデータを作ってくれ。パネルの地色とラベルの色が浮かないよう、色調整をしっかり頼む」

「……せんぱい、手伝ってくれるんですか……?」
「俺もプロジェクトの当事者だ、放っておけるわけないだろ。急ぐぞ!」

手の震えはまだ収まらない。けれど、先輩の力強い言葉に背中を押され、私はすぐに修正用ロゴデータの作成を開始した。
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