クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
空が白み始める少し前。深夜の底のような静寂の中で、すべての作業が終わった。
営業部から企画部までのデスクや執務室の壁を埋め尽くすように並べられ、再び丁寧に梱包された60枚のパネルには、新しいロゴがぴたりと収まっていた。
部長は汗を拭いながら、私の肩をポンっと叩いた。
「いいか御空くん。仕事ってのはな、一人で抱え込むもんじゃない。『助けて』って言えるのもリーダーの才能だ。……まぁ、コイツを動かした時点で君の勝ちだよ、カハハッ」
部長はそう言って、先輩の肩をガシッと掴んで笑った。
「お前も、いい顔してたぞ。……しっかし、さすがに老体にはキツイ時間だ。私を駅まで送れ! タクシーを頼む」
「部長、本当に感謝します。みんなも、イベントまで時間はないが少しだけでも休んでくれ」
嵐のような熱狂が去り、静まり返ったフロア。
窓の外はまだ夜の色をしていたけれど、空の端のほうがほんのりと明るくなりかけていて、朝の気配が静かに混じり始めていた。
部長に肩を貸すようにして歩いていく先輩の背中を、私はいつまでも目で追いかけていた。
(……一人じゃないんだ)
私は、デスクに並べられたパネルをそっと撫でた。
機械で刷り直した完璧な製品より、みんなで必死に切り貼りしたこのパネルの方が、ずっと誇らしく、そして——美しく見えた。
「……よし」
私は小さく呟き、深く息を吐いた。
喉はカラカラで、体は鉛のように重い。
けれど、胸の奥には、今まで感じたことのないほど熱い気持ちが灯っていた。
厳しいだけだと思っていた、あの背中。
不器用なやり方で私をずっと守ってくれていた。そして、今回だって……。
(もっと、あの人の隣にふさわしい自分になりたい。……このプロジェクトを、絶対に、最高の形で終わらせてみせる)
イベント会場へ向かう準備を始める私の瞳に、もう迷いはなかった。
プロジェクトの成功の先に待っている、先輩と「対等」になれる日を信じて。
営業部から企画部までのデスクや執務室の壁を埋め尽くすように並べられ、再び丁寧に梱包された60枚のパネルには、新しいロゴがぴたりと収まっていた。
部長は汗を拭いながら、私の肩をポンっと叩いた。
「いいか御空くん。仕事ってのはな、一人で抱え込むもんじゃない。『助けて』って言えるのもリーダーの才能だ。……まぁ、コイツを動かした時点で君の勝ちだよ、カハハッ」
部長はそう言って、先輩の肩をガシッと掴んで笑った。
「お前も、いい顔してたぞ。……しっかし、さすがに老体にはキツイ時間だ。私を駅まで送れ! タクシーを頼む」
「部長、本当に感謝します。みんなも、イベントまで時間はないが少しだけでも休んでくれ」
嵐のような熱狂が去り、静まり返ったフロア。
窓の外はまだ夜の色をしていたけれど、空の端のほうがほんのりと明るくなりかけていて、朝の気配が静かに混じり始めていた。
部長に肩を貸すようにして歩いていく先輩の背中を、私はいつまでも目で追いかけていた。
(……一人じゃないんだ)
私は、デスクに並べられたパネルをそっと撫でた。
機械で刷り直した完璧な製品より、みんなで必死に切り貼りしたこのパネルの方が、ずっと誇らしく、そして——美しく見えた。
「……よし」
私は小さく呟き、深く息を吐いた。
喉はカラカラで、体は鉛のように重い。
けれど、胸の奥には、今まで感じたことのないほど熱い気持ちが灯っていた。
厳しいだけだと思っていた、あの背中。
不器用なやり方で私をずっと守ってくれていた。そして、今回だって……。
(もっと、あの人の隣にふさわしい自分になりたい。……このプロジェクトを、絶対に、最高の形で終わらせてみせる)
イベント会場へ向かう準備を始める私の瞳に、もう迷いはなかった。
プロジェクトの成功の先に待っている、先輩と「対等」になれる日を信じて。