クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
静まり返った9階のフロア。
執務室入口の扉のロックをそっと解除してドアを開けると、入り口近くの営業エリアの奥に予想通り先輩の姿があった。
パソコンのモニターの光に照らされたその顔は、微動だにせず画面に集中している。邪魔をしてはいけないと思い、私は声をかけずに足音を殺してフロアの奥にある自分の席へと向かった。
自分のデスクの引き出しにHDDを静かにしまってしっかりと鍵を掛ける。
一息ついてから私はフロアの向こう側——作業を続ける先輩の横顔をそっと見つめた。
「……お疲れ様です。先輩」
自分の席から、声をかけてみる。
ピタリと、タイピングの音が止まる。
ゆっくりと顔を上げてこちらを振り向いた先輩は、少し疲れて見えたけれど、その声はどこか穏やかだった。
「……りんりん。飲み会はどうしたんだ?」
「……あ、はい。大事なデータを出しっぱなしだったのを思い出しちゃって。そのまま酔っ払うのはリーダー失格かなと思って、ちゃんと片付けてから合流しようと一旦戻ってきました」
私が少し照れくさい気持ちを隠しながら、でも胸を張って答えると、先輩は「……そうか」と短く笑った。そして、「あ」と何かを思い出したような顔をして、ふっと表情を緩める。
「りんりん。ちょっと、こっちに来てくれるか」
先輩が軽く手招きをする。
(え……?)
予想外の言葉に一瞬心臓が跳ねた。
が、私は慌てて「あ、はいっ、行きます!」と返事をし、小走りで先輩のデスクへと向かった。
執務室入口の扉のロックをそっと解除してドアを開けると、入り口近くの営業エリアの奥に予想通り先輩の姿があった。
パソコンのモニターの光に照らされたその顔は、微動だにせず画面に集中している。邪魔をしてはいけないと思い、私は声をかけずに足音を殺してフロアの奥にある自分の席へと向かった。
自分のデスクの引き出しにHDDを静かにしまってしっかりと鍵を掛ける。
一息ついてから私はフロアの向こう側——作業を続ける先輩の横顔をそっと見つめた。
「……お疲れ様です。先輩」
自分の席から、声をかけてみる。
ピタリと、タイピングの音が止まる。
ゆっくりと顔を上げてこちらを振り向いた先輩は、少し疲れて見えたけれど、その声はどこか穏やかだった。
「……りんりん。飲み会はどうしたんだ?」
「……あ、はい。大事なデータを出しっぱなしだったのを思い出しちゃって。そのまま酔っ払うのはリーダー失格かなと思って、ちゃんと片付けてから合流しようと一旦戻ってきました」
私が少し照れくさい気持ちを隠しながら、でも胸を張って答えると、先輩は「……そうか」と短く笑った。そして、「あ」と何かを思い出したような顔をして、ふっと表情を緩める。
「りんりん。ちょっと、こっちに来てくれるか」
先輩が軽く手招きをする。
(え……?)
予想外の言葉に一瞬心臓が跳ねた。
が、私は慌てて「あ、はいっ、行きます!」と返事をし、小走りで先輩のデスクへと向かった。