クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
「……先輩。私がリーダーになってから、全然話せなくなっちゃいましたね」
「……そうだな。俺も、少し変な感じだったよ。隣に、うるさい新人がいないのは」
「えーっ! うるさいって、ひどいです!……私、あれでも結構、先輩の顔色を伺いながら静かにしてた時もあったんですよ?」

私が膨れてみせると先輩は「それは初耳だな」と、短く、けれど心から楽しそうに笑い声を漏らした。
冷たい空気の中に、先輩の笑い声が白い息と一緒にふわりと溶けた。

(……よかった。話しかけて、本当によかった)

リーダーとしての仮面を脱いで、ただの「りんりん」に戻って先輩と言葉を交わすこの時間は、凍えるような一月の夜風さえも心地よく感じさせてくれた。

以前のように他愛もない話をしていると、不意に会話が途切れた。
ふと先輩の顔を見ると、何かを考え込むように視線を伏せている。
声をかけようとした、その時だった。
先輩はふっと足を止め、夜空を見上げるようにしてつぶやいた。

「……ずっと、思ってたんだ」
「え……?」
「……りんりんのこと。プロジェクトが始まってから、ずっと……」

白い息と共にこぼれ落ちた先輩の声は、微かに震えていた。
いつも冷静で、どんな時も完璧に感情をコントロールする彼からは想像もつかないような、ひどく切実で、迷子のような響き。
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