クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
(……え、なに? 「ずっと」の次は、何……?)

私の心臓が、耳の奥でうるさく脈打ち始める。

(……どうしたの、先輩。そんな、苦しそうな顔をして……)

何かに耐えるように強く結ばれた口元や、揺れる瞳。その横顔は、何か途方もなく大きな感情をギリギリのところで押さえ込んでいるように感じた。
いつもなら絶対に隙を見せない彼が、お酒のせいか、それとも不意に私が現れたせいか、ほんの一瞬だけ見せたひび割れだったのかも知れない。

……けれど。
先輩は私を見てハッとしたように息を呑むと、何かを無理やり飲み込むように苦しげに笑い、ゆっくりと視線を逸らした。

「……いや。なんでもない。……少し、飲みすぎたかな」

そのまま歩き出してしまった背中を、私は無言で追いかけることしかできなかった。
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