クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
(……………何、今の……)

服越しでも伝わってきた、あの熱の感触。
いつもクールな先輩からは想像もできないほど激しく揺れていた、剥き出しの瞳。

(……やっぱり……先輩もずっと、自分の気持ちを押さえ込もうとしてる……?)

そう思いたくなるくらい、あの一瞬の彼は、上司という仮面が外れた「ただの男の人」の顔をしていた気がした。
……でも、甘い期待はすぐにもう一つの可能性によって打ち消される。

(ううん、違う。先輩はすごく真面目な人だ。……ただ単に、部下にセクハラまがいのことをしてしまったと気づいて、絶望して動揺していただけなのかも……)

そう考えれば、あの激しく揺れていた瞳の理由も痛いほど説明がついてしまう。

私に対する「好意」が溢れそうになったのか、それとも「上司としての致命的なミス」に対する恐怖だったのか。
淡い期待と、「そんなはずない」と自分に言い聞かせる慎重さが交互に押し寄せて、気持ちの着地点が全く見つからない。

私はデスクに突っ伏したまま、深く息を吐いた。
動揺で手はまだ震えている。けれど、胸の奥で最も強く渦巻いているのは、たった一つの切実な願いだった。
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