クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#23【凛視点】「その歌詞、見せてください」——私の一言で、先輩の時間が止まった夜

ふと会話の隙間に、店内のスピーカーから少し低音の効いたUKロックが流れ込んできた。
私がリズムに合わせて軽く肩を揺らすと、先輩がふっと目を細め、グラスを置いた。

「……りんりん。さっきから音楽に反応してるな。……こういうの、聴くのか?」
「あ、気づきました? 実は私、こういう低音がきいて疾走感のあるロックが大好きで……。あ、でも先輩の前でこういう話、初めてですよね」
「……意外だな。りんりんはもっと、キラキラしたポップスとかを聴いてるイメージだった」
「えーっ、偏見ですよ! こう見えて、ベースラインが格好いい曲には目がないんです。……あ、今のフレーズとか、最高……」

私がうっとりと耳を澄ませると、先輩が少しだけ照れくさそうに、結露したグラスを指でなぞりながらポツリと漏らした。

「…………ベースか。……実は俺、学生の頃、バンドでベースを弾いてたんだ」
「えっ!! 先輩がベース!? ……待ってください、似合いすぎます! 格好よすぎます……!」

身を乗り出す私に、先輩は「……よせ、昔の話だ」と苦笑しながらも、少しだけ饒舌になる。
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