偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「なるほど、商社か。俺の父は外交官でした」
 蛙の子は蛙らしい。公務員の世界は二世三世も多いとは聞くが、東條はまさにそうなのかもしれない。

「お父さまとご一緒のお仕事をされているんですね!」
「ええ。気づいたら背中を追っていました」

 東條は苦笑する。それでも父親を誇らしく思っている気配は伝わってきていた。

 話しながらでも、行儀悪くならない程度に東條は食事を進めており、気づけば皿の上は空になっている。

「まだ、お召し上がりになりますか? 取ってきますよ」
「いや。大丈夫です。ありがとうございます。話にも付き合ってくださって助かりました」

「いいえ。お食事もおいしいホテルとのことですので、少しでも味わっていただけて良かったです」
 東條は近くのテーブルに皿を置いて、依織に向き直った。

「いつか、企画ができるように頑張ってください。応援しています」
 さっと手を出すのは握手だろう。

 少し珍しいけれど、それも帰国子女であれば納得はできる。
 きっと応援の気持ちなのだと、依織は胸が温かくなった。

「ありがとうございます」
 そっと軽く握り返した。大きな手は温かく包み込むようだった。

 手を離して軽く会釈するとその場で二人は別れる。
(素敵な人だったなぁ)
 それにとても話しやすかった。

 軽い食事も取ってもらい、案内が必要なイベントももうない。
 特別なゲストへの配慮はあとは帰る時くらいだろうと依織はその場を離れる。
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