偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「簡単なものしかできませんよ」
 東條がいつも食べているような高級料理店には足下にも及ばない。
「二人と一緒に食べられるだけでも幸せだ」
 心からの笑顔に依織は戸惑うことしかできなかった。

 あのあと、お肉屋さんのおかみさんに「おまけするから!」と言われて鶏肉を買って帰り、夜ごはんは鶏の照り焼きになった。

 春花も大好物のメニューだ。
 いつもなら依織が料理をしたり、片付けをしている間、春花はひとりで遊んでいるのだが、今日は東條がいる。

 一緒に本を読んだり、おもちゃで遊んだりしているようで、春花の楽しそうな声が聞こえてきていた。
「パパ、この子にね、名前をつけたの」
「ふぅん、どんな名前?」
「えっと……みるく」
「いい名前だな」
 微笑ましい会話を聴きながら、安心して料理に集中できる。

「依織……」
「ひゃあっ……」
 急に声をかけられることに慣れておらず、思わず変な声が出てしまった。
「そんなに驚かなくても」
 くつくつと東條が笑っている。

「な、何ですか?」
「何か手伝うことはあるか?」
「春花と遊んでくださるだけで十分です」
「分かった。できることがあれば、声をかけてくれ」

 東條はとても優しい。
 その優しさに胸が温かく感じるのも久しぶりのことだった。
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