偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「依織……もう絶対に逃がさない」
 きらりとした目と甘い声に囚われて、背中がぞくんとしたのは、怖さだったのか官能的な雰囲気を感じたからなのか、依織には判別がつかなかった。

 身動きできない依織に柔らかく東條の唇が重なる。
 それは決して深くなることがなくて、包み込むように依織の唇に何度も触れた。くすぐったいような甘い快感が依織に訪れる。

 そっと唇を離すと、東條はぎゅっと依織を抱きしめた。
「こんなに細い身体でひとりで頑張っていたのか」

 依織の両親はすでに亡くなっている。
 若くして父は病気で亡くなった。とても仲の良い両親で、母はまるで父を追うように亡くなった。

 自宅はひとりで使うには広かったし、思い出の中で過ごすのもつらかったので、売却している。
 本当のことを言えば両親に春花を会わせたかった。もちろん言っても詮無いこととは分かっているけれど。
 今、依織の家族と言えるのは、春花だけだった。

 自分を抱きしめる腕の強さに、依織は東條の悔恨を感じた。
「依織、俺と今後のことを考えてくれないか」

 他にも言葉を続けようとして東條が飲み込んだのが分かった。
 飲み込んだ言葉が依織には分かる気がする。

『春花のためにも』
 東條はそう言いたかったのではないだろうか。それを言われたら依織は反論できない。
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