偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 依織に考える自由を与えるために、東條はあえて全てを伝えることはしなかった。
 春花のことを別にしたとしても、依織は東條に惹かれている。

 けれど、東條は外務省のエリートだ。
 そんな彼が結婚前に子どもがいたなんて、出世の邪魔になるんじゃないだろうか。

「東條さんに迷惑をかけたくないんです」
「迷惑なわけがないだろう。依織にとっていちばん大事な時、側にいられなかった。それが俺にとっての後悔だよ」

 東條はゆっくりと身体を離した。
「本当に大事なんだ。依織、ゆっくり考えていいから。今日は帰るよ」

 ポン、と頭を撫でられる。そのまま、耳元に唇を寄せられた。
「ただ、俺は諦めるつもりはないから」
 ドキッとする。耳の奥に残るような蕩けそうな声。離れる前にはなかった雰囲気だった。

「また、明日ね」
 言葉を発することができない依織を居間に残して、東條は立ち去った。

(東條さんって、こんな人だった?)
 赤く火照る頬を押さえて、依織はぼうっとして立ち上がることもできなかった。
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