偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
『就職のお祝いに。頑張って夢を叶えてね』
 そう両親がプレゼントしてくれたもので、お守りのように思って大事にしていたのに。

 お昼休みに依織はスマートフォンから交流会のあったホテルへ電話してみる。
『ペンの落し物……ですか? 特に届け出はないですね』

 あっさりとした回答で依織はがっくりと肩を落とす。
 大切なものだったのに失くしてしまった。
 その事実は依織を落ち込ませ、悲しい気持ちにさせる。

(どこか別のところで落としているかもしれないし)
 もう一度探してみようと仕事に戻る。
 しばらくした頃に依織の席の内線が鳴った。

「はい。桜葉です」
『桜葉さん、お客様です。東條様という方、お分かりになりますか?』

 それは受付に東條が来ているという知らせだった。
「すぐ、伺います」
 知ってはいるけれど、尋ねてこられる心当たりはない。

 けど、わざわざ受付まで来ているのに出ないわけにも行かないだろう。

 もちろん、東條に会えることは嬉しくはあったけれど、訪問される理由が分からなかった。

 戸惑いと嬉しさとごちゃ混ぜな気持ちで依織は受付に向かう。
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