偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 彼女は依織が怯みもしないとは想像もしていなかったのだろう。
「図々しいって言ってるのよ」

「東條さんが私のことを勘違いしていて図々しいと言ったのですか?」
 彼女はカッとしたらしく、依織を強く睨みつける。

「大体、あなたみたいな人とお付き合いしているなんて聞いてないわ。私は彼の同期でずっと知っているし、今も同じ職場で働いている。ご家族とも顔見知りなのよ。なのに、あなたのことは聞いたことがない」
「聞くほど話していないのでは?」

(悠臣さんはいろんな人に、自分のプライベートを気軽に打ち明けるような人じゃない)
 だから、橘に限らず職場で誰にも言っていないことは容易に予想がつく。

「お聞きになっていらっしゃらないから、勘違いなのですか?」
「どこの誰とも知れないような人が悠臣の隣に図々しく立っていることが、だわ」

「この場へのお誘いは悠臣さんからですが。私が行きたいと言ったわけではないです。勘違い……?」
 実際に東條からの誘いがなければ、こんな場にくるなんてことはなかっただろう。
 それは依織が誰よりもいちばんよく分かっている。

「依織を俺から引き離して何がしたかった?」
 その場に響いたのは、東條の低い声だった。

「俺のパートナーに何か用事でも?」
 橘の前にいた依織を庇うように東條は自分の方へ抱き寄せる。
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