偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「思いあがって勘違いされているようでしたから、一言お伝えしたまでですわ」
 腕を組んで言い募る橘は、自分に非があるとは一切思っていない様子だ。

「勘違い? 依織、なにか勘違いしていたか?」
 横にいる依織に東條は尋ねた。正直に答える。
「いいえ。悠臣さんにお声をかけていただいて、この場にいるとお伝えしたのですが」

「依織、そう言ったのか?」
「ええ。事実ですから」
 ふっと東條が機嫌良さそうに笑うのが分かった。
「俺が送ったドレスもアクセサリーもすごく似合ってる。大使も依織をひどく気に入っていただけたようで、また来ないかと誘われた。婚約者として鼻が高い」

 これ見よがしに東條は依織の左手を取り、指輪のついた薬指にキスをした。
 そのデザインは見るものが見れば、どれほどのものかは分かるはずで、橘も一瞬、目を奪われている。

 東條は顔を上げると、依織の手を自分の腕に絡ませた。
「そう言えば橘さん、うちの実家にもよく出入りしているようだが、特に用がなければ今後は遠慮してほしい。依織に誤解されたら困るからな」

 そう言って、東條は橘に背を向けた。
「依織、行こう」
 ひやりとした空気をまとう東條は、今まで依織があまり見たことのないものだ。

 仕事では感情を抑えることも多いのかもしれないと依織は感じた。
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