偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 休みの最終日、佳い日を選んで、東條と依織は入籍した。

 あらかじめ、父と旭陽が婚姻届に記入をしてくれていた。前日、依織は『妻となる人』の欄に記入をするためにペンを握る。

 それはあの時東條が依織に届けてくれたペン。
 婚姻届を前にした依織は、それを思い出して手が止まる。
(そうだわ。このペンから始まった恋だった)
 手が止まった依織を見て、東條が心配そうな顔で覗き込む。
「書きたくない?」

 書きたくないわけじゃない。
 ただ、いろんなことが胸に押し寄せて、感慨深くなっただけだ。
「いろんなことを思い出したの。このペンのこととか」

 東條はふっと笑うと、依織の指輪のついた左手をそっと握る。
「覚えている。依織にまた会うためにこのペンを拉致したんだ」
「そうだったの?」
「あの時から依織は特別だった」

 何年も経って知った真実だった。照れているのをごまかすように東條が口を開く。
「まだ書けない? 手伝おうか?」
「大丈夫よ」

 どこまでも甘い東條に依織も笑ってしまう。
 依織は目線を婚姻届の空白部分へ落とす。小さく息を吸ってペン先を紙の上に置いた。
 一文字ずつ丁寧に書く。
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