偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「ああ、依織の以前の会社の方ですね」
「悠臣さん、以前の上司の御堂さんです。今の会社を紹介してくださったのも、御堂さんなんですよ」
「それは妻がお世話になり、大変にありがとうございました」
「妻……ですか」

 そこで初めて依織は気づく。
(ん? 悠臣さんの言葉に刺がない?)
 心なしかいつもと表情も違って硬い気がする。
 嫉妬……とか。まさかね?
 あの東條が心を揺らすなんてことは考えられないと、依織は思いついた気持ちを打ち消す。

「改めてお礼をお伝えすることができて、本当によかったです。ありがとうございました」
「あ、いや。その……お幸せに」

 にこりと依織は笑顔を返す。
 御堂はその笑顔を眩しそうに見つめたあと、頭を下げて二人に背を向ける。

 東條は依織の腰を抱いたまま、笑顔で話しかけた。
「依織も知っている大使がご挨拶したいと言っているんだ。来てくれるか?」
「ええ。もちろん」

 そうして、東條は依織を会場の外に連れ出す。
 それはパーティの際に使う控室のひとつだった。
「え? ここに? 悠臣さん?」

 部屋に入った瞬間、東條が依織を強く抱き締める。耳元に囁くような声がした。
「彼は単なる以前の上司?」
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