偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
(本当に行くつもりだったんだ)
 もちろん社交辞令でなかったことは嬉しい。
 心臓が早鐘を打ちだして、思考が追いつかない。

 あのスマートで非の打ち所のない魅力を身にまとっている人と食事……と考えるとそれだけで今から緊張しそうだ。

 URLに記載されていた店はカジュアルイタリアンのお店だった。
(おいしそう……)

 どんなお店か、確認をしておこうと依織スマートフォンの画面に触れる。
 店のホームページを見ると、写真からは木のぬくもりの感じられるインテリアと旬の食材を丁寧に料理すると記載があって、期待でわくわくした。

 実は依織には交際歴と言えるほどのものがほとんどない。

 中学までイギリスで過ごした依織は高校の頃は周りとなじむことが難しかった。
 その頃に交際を申し込んでくれた人がいて、少しだけお付き合いしたが、きっと相手の期待には沿えなかったんだろう。

 半年もしないうちに自然消滅のような形で終わってしまった。

 高校生の頃の依織は、学校はもちろん日本という環境に馴染むのに精いっぱいだったし、交際まで気持ちが至らなかったことも原因だろう。
 彼には申し訳ないことをした。

 一緒に食事に行ったからと言って即座に交際に結びつくわけでもないのに、依織は当時のことを思い出して少し切ない気持ちになった。
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