偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「たくさん歩きましょう!」
「食べ歩きも楽しいんじゃないか?」
 にっと東條が笑みを浮かべる。依織は眉を寄せた。
「それじゃあ、歩く意味がないじゃないですか」

 軽口を言い合いながら食事を終え、二人は外に出た。二人で並んでゆっくりと歩き出す。
 午後の光はやさしくて、まるで時間までゆっくり歩いているみたいだった。

 黒い蔵造りの建物が並ぶ通りは、どこか懐かしくて、でも初めての場所に胸が高鳴る。
 彼と並んで歩くたび、知らない街じゃなくて、二人だけの思い出の場所に変わっていく。

「甘いもの、好き?」
 そう言って東條が立ち止まったのは、昔ながらの菓子屋の前。
 色とりどりの駄菓子に目を奪われていると「はい、これ」といつの間にか手の中に可愛らしい巾着を手渡された。開けると、中には飴が入っている。

「今じゃなくても、仕事のお供にでも食べて」
「ありがとうございます」
 お礼を言いながらも、依織はその飴を一つ口に入れる。ふわっと広がる優しい甘さに、思わず笑ってしまう。

 東條が街並みを見回して少し照れたように言った。
「こういうの、すごく楽しい。きっと君と一緒だからだ」
「私もです」

 依織は東條にも飴を差し出す。ふっと微笑んだ東條はあーんと軽く口を開けて見せた。
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