偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「悠臣くんは元気そうだな。お父さんはお元気ですか?」
「お久しぶりです。父も元気にしています」

 彼の差し出した手を東條は軽く握る。
 当たり障りのない話をしていたら、視界の端に先ほどの彼女が戻ってきたことに気づく。

 せっかく食べるものを持ってきてくれているのに、あまり待たせるのも申し訳ない。
 適当なところで話を切り上げて、彼女の方を向いた。

 彼女は東條に食べ物の載った皿を渡すと、そそくさとその場を後にしようとする。
(求めもしていない人は近くにいようとするのにな)
 彼女にその場を去ってほしくなかった。

 だから東條は口を開く。
 「このままだとまた誰かに声をかけられるかもしれないので、近くにいていただいてもいいですか?」

 東條をじっと見て、彼女は事情を察したのだろう。
「私でいいんですか?」
 その丁寧な対応には好感を覚えた。
「もちろん。あ、お名前をお聞きしても大丈夫ですか?」

「はい。私、桜葉依織と申します」
「東條悠臣です」
 その時彼女、依織がくすっと笑ったのだ。
 ほんの一瞬の笑顔だったはずなのに、それがやけに心に響いた。

 騒がしいはずの周囲の音さえ遠のいたような気がした。
 ただ、依織の笑みだけが心に焼き付いた。
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