偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
(そろそろ、いいか……)
 交流会も落ち着いた頃合、東條は主催者へ歩み寄った。

「私はそろそろ失礼いたします」
「東條さん、今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそこのような有意義な会にお呼びいただき、ありがとうございました」

 主催者は近くにいた係員を呼ぶ。
「東條さんの帰りの車を」
「はい。いつでもお出しできます」
「では、エントランスまでお送りさせてください」

 会場の入口まで主催者と歩き出したら、目線の先に依織の姿が見えた。
 くるりと彼女が振り返った時、スカートのポケットから何か落ちる。
(ん……?)

「あ、東條さんがお帰りになることを会場のメンバーにも伝えてきます。少しお待ちいただいてよろしいですか?」
「構いません」

 主催者が自分から離れた隙に、東條は先ほど依織がいた場所まで行き、落ちていたものを拾った。
(ボールペン……?)

 重みのあるペンは依織の名前が彫り込まれており、きっと大事なものなのだろうと察することができた。
 顔を上げたが、彼女の姿は目に入らない。
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