偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「す、すみません」
 気を使ってくれたんだ。
 見られてしまった恥ずかしさと、東條の優しさに胸が詰まる。

「ん……、うちならここから車で五分ほどだから、タクシーを呼ぼう」
 そう言って、東條は配車アプリを使うためにスマートフォンを開いていたが、その首元が少し赤くなっているのが見えて、依織はドキンとする。

 二人が交際を始めて二カ月ほど経過していたが、お互い忙しいこともあり、デートできたのは数回だ。
 それも外で食事をしたり出かけることが多く、お互いまだ相手の家には行ったことがない。

(東條さんの家へ……)
 そう思うと急に意識してしまって、依織は胸が大きな音を立てるのを止めることができなかった。

「うちでいい?」
 そう聞かれて、依織はこくんと頷く。
 行ってみたいという気持ちは抑えられない。
「いいんですか?」
「もちろんだ」

 にこりと東條が笑うので、依織は安心する。
「じゃあ、遠慮なくお邪魔します」
「散らかっていても文句は言わないでくれると助かる」
「だってお忙しいですから」

 そんなことを言っていたら、タクシーがすぐにやってきた。
 乗り込んだ東條は依織も知っている都心のタワーマンションの名前を行き先に告げる。
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