偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 確かに着せかけてもらっているスーツも極めて高級な生地で仕立ててあるし、裏地もネームが入っていることからもオーダーであることが分かる。
 あんなところに住んでいるんだというのが、顔に出ていたかもしれない。

「マンションは祖父が買ったんだ。それを使わせてもらってる」
「ああ、そうなんですね」
 交際を始めて少し経っているし、育ちが良さそうなのは最初から分かっていた。それに海外赴任経験もある外務省の幹部を父に持っているのだ。

 そんなものかと依織は納得していたから、タクシーの後部座席で隣に座っている東條が、安心したように軽く息を吐いたことは、気づいていなかった。

 エントランスを抜けてロビーに入るとコンシェルジュが「おかえりなさいませ」とにこやかに出迎える。
 高層階専用のエレベーターはキーをパネルにかざさないと該当の階のボタンも押せない、非常にセキュリティの高いものだった。

 玄関を入ると自動でライトが点灯するセンサー式だ。
「どうぞ」
 そう促されて部屋の中に入ると、廊下の奥のリビングの大きな窓からは夜景が一望できる部屋だ。

 散らかっていると東條が言っていたが、その言葉は全く違う。シンプルでモダンなインテリアはまるでモデルルームのようだし、部屋の中もチリひとつ落ちていない。
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