偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
(これって私の部屋の方がよっぽど……)
 もちろん狭いこともあるだろうが、雑然とした自分の部屋のことを思うと、依織は言葉も出なかった。

「桜葉さん、風呂は入っているから温まって。洗濯物は洗濯機に入れてそのまま回してしまっていいよ。乾燥まで自動でやるタイプだから」
「え? お風呂、もう入っているんですか?」
 東條が風呂を入れた様子がなかったからだ。

「ああ、スマートハウスだからね。タクシーに乗る前、入れておいた。普段からそうなんだ」
 バスルームはここ、と東條が案内してくれる。ガラス張りのバスルームに鎮座している風呂はジェットバスも備えているようだ。

「入浴剤は好きなのを選んでいいよ」
 見せてもらった籠にはフルーツやフローラルな香りのものも入っていて、依織は複雑な気持ちになった。

(誰か、女性が持ってきたのかな?)
 その顔を見て東條が口を開く。
「忘年会のビンゴの景品だよ。使いどころがなくて困ってた。ゆっくり温まってきて。あとで着替えを持ってくる」

 依織はグレープフルーツの香りを選び、お風呂の中に入れる。
 バスルームいっぱいに爽やかな香りが広がった。

 急な豪雨のせいで東條の家にお邪魔することになり、依織の緊張はまだ解けなくて落ち着かない心地だ。
「桜葉さん」
 東條がバスルームのドアをノックする。

「は、はいっ」
「湯船に入ってる?」
「入ってます」
「開けるよ?」
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