偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 薄くもやのかかる景色と降り注ぐ雨が見えて、まるで雨に閉じ込められているようだ。
 東條がくすっと笑った声が耳元に聞こえて、腕が依織の胸の辺りで交差する。

 背後から抱き締められて、低く響く声が近くて、今日でいちばん鼓動が大きくドキドキと跳ねているのが分かった。

「まるで、雨に閉じ込められているみたいだなって……」
「雨をそんな風に感じたことはなかった。桜葉さんと閉じ込められるなら、なかなか悪い気分じゃない」
 こんなに甘い声を聞いたことがない。

「東條さんはお仕事の時はとても厳しい顔ですけど、プライベートは優しいです。私が思っているよりもずっと」
「桜葉さんといると、甘やかしたくて仕方なくなる。自分でもこんな気持ちは初めてで、楽しんでいる」

「楽しいんですか?」
「楽しくて、とても幸せだ」
 視線が絡んで、切れ長の目が依織を熱っぽく見つめていた。囚われたら逸らすことなんてできなくて、依織もただ見つめ返す。

 唇に東條の吐息が当たるくらい顔が近い。
 ふっと東條の指先が依織の頬に触れた。顔が傾き、さらに近づいて依織は目を閉じる。

 熱を孕んだ東條の唇が重なった。
 もどかしいくらいに優しい触れ方だ。
 好きだという気持ちが胸の中にあふれてくるのを依織は感じた。
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