偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「東條さん?」
「俺の恋人は聞き分けが良すぎるな」
「やだやだってバタバタしましょうか?」

「やってごらん。ベッドに引きずり込んでやる」
「今は引きずり込まないんですか?」
「いや、引きずり込む」

 笑い声を上げながら、二人でベッドに寝転がった。
 上にいる東條の身体を依織はぎゅっと抱きしめる。

 好きだと自覚した日から気持ちが少なくなることはない。ますます惹かれていく自分を依織は感じていた。

「依織……」
 そう呼ばれて身体がぴくんと揺れる。
 今までは桜葉さんと呼ばれていた。
 彼が依織のことを名前で呼んだのは初めてだ。

 ふわっと顔が赤くなったのが分かる。
 視線が絡んだ。依織の上にいる東條は優しい顔で見下ろしていた。端正な顔が近い。

「ん? 顔が赤いな?」
 指の背で色づいた頬を撫でられる。

「だって、急に名前で呼ぶからです……」
「ずっとそう呼びたかった。名前で呼んでいいか?」
 こく、と依織は頷く。

 ドキドキと心臓の音があまりにも大きな音を立てるから、依織の上にいる東條にまで聞こえてしまうんじゃないかと思うと、身動きもできない。

「依織」
 とても甘い声だった。
「はい」
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