偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 周りから見たら、新しいプロジェクトへ関わるようになって、張り切っているように見えていただろう。

 家に帰れば、まだ部屋の中に東條の気配が残っていて、食事が喉を通らないことも多い。
 最近はときに食べたものを戻してしまうこともあった。

 つらくても、もう東條はいない。
 そう思うと目に涙が浮かんでくることもあったが、そんな時は仕事のことを考えることにした。

 プロジェクトのメンバーになって二カ月が経過していた。
 次の会議で依織は初めて企画書を提出することになっている。

 一時期は日本での爆買いや観光名所を訪問するのがインバウンドの象徴のようになっていたが、最近はだいぶ変わってきていた。

 日本らしさの文化体験や日本食、非日常感や日本人らしいおもてなし。
 そんなものを体感しに訪日している人が増えている。
(あまり観光地化されていないところを最近は求めているとも言われているし……)

 観光地化されていない寺社の訪問や、景色の良い都心の公園の散策、お箸づくり体験などいくつかの案を企画書にして、依織は資料を作っていった。

「お箸づくり体験はいいね。作ったものをそのまま持ち帰ってもらえばお土産にもなる。箸の使い方講習と合わせてやるのもいいかもしれない」
「そうですね。きちんとした箸の持ち方を習う機会もないでしょうから」

「ランチと合わせてのツアーにしてもいいかも」
「チームで少し詰めよう」
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