偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 その人と話が終わると東條は依織の方を向く。
 近くまで来ていたのに気づいていたのだと分かった依織は、両手で料理の載った皿を渡す。

「どうぞ」
 東條は柔らかな笑みを浮かべた。
「お手数をお掛けいたしました」
「いいえ。お口に合えばいいんですけれど」

 そっとフォークを渡して、依織がその場を離れようとすると「君……」と東條に声をかけられた。
 依織は声をかけられて足を止め、振り返る。

「このままだとまた誰かに声をかけられるかもしれないので、近くにいていただいてもいいですか?」
 確かにまた声をかけられたら、東條は食事もままならないだろう。

「私でいいんですか?」
「もちろん。あ、お名前をお聞きしても大丈夫ですか?」
「はい。私、桜葉依織と申します」
「東條悠臣です」

 丁寧に挨拶をしてくれたのに、依織はついくすっと笑ってしまった。
「ん?」
「いえ。先ほど受付の際にお名前を教えていただいていたので」
「そうか……そうですね」

 東條は一旦口元を手で抑えた。その仕草は少し照れているようにも見えて、完璧そうに見えた東條に親しみを持たせる。
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