偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 もうすでに民間機で退避できる邦人については退避を進めていた。
 クーデター発生ともなれば、民間機は飛ばせない。
 そのため、政府専用機を使うこととなる。

 外務省として現地との調整、日本政府との調整に追われる日々を送ることになった。
 東欧担当として、緊急対策のうち特に救出チームを任された東條は救出へ向かう政府専用機に同乗し、現地での対応を任される。

 現地へ向かうことを、依織にきちんと伝えなくてはいけない。
 そんなことは分かっていた。
 自分の心が決まっていなかったから、連絡をためらっていた。

 本心を言えば待っていてほしい。
 けれど、現地の状況の詳細は行ってみなくては分からない。

 対応が数か月で終わるとも限らない。
 交渉の状況によっては数年かかることもあると父から聞かされていたからだ。

 今回はそれだけではない。軍事クーデターの発生した国への派遣は安全とは言い難い。
 正直自分の命すら保障されているものでもない。
 それでも職務のために行かなくてはいけないのだ。

 こんな不安定な状況の中、待っていてほしいなんて、とても言えなかった。

 だからと言ってきっぱりと依織に向かって別れを告げられるかというと、その決心もなかなかつかなかった。

 愛おしい存在だ。依織は素直でくるくると表情が変わり、優しくて思いやりがある。
 一緒にいると、気持ちが穏やかになり癒される。

 しかし、自分に万が一のことがあれば彼女につらい思いをさせてしまう。
 少しでもそのリスクがあるのであれば、避けるべきだというのが冷静な自分の判断だ。

 分かっていた。
 別れを告げるのがベスト。
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