偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
「分かりました。今は別れます。でも、待っていてもいいですか?」

 その気持ちは嬉しい。でも断らなくてはいけない。
 それが依織のためなのだから。

「君がきっとそう言うと思ったから、終わりにしようとしているんだ」
「分かっています。私のために別れようって言ってくださっていることも……」

「待つな! 終わりだ。分からないか? もう終わりなんだ。依織との関係は終わりにする。これで気が済んだか?」
「そんな……っ」

 別れたくはない。
 けれど、その愛おしい気持ちがあるのなら手を離さなくてはいけない。
 それが彼女のためなのだと自分に言い聞かせて、手を離し強く突き放した。
 
 ドアが閉まったのを目の前で見て、東條は玄関で座り込んだ。
 前髪を強くかき上げるようにして、追いかけて引き留めたくなる感情を必死で抑える。

(これが彼女のためなのだから)
 それから東條は仕事に専念することにした。

 * * *
 
「春花、靴が履けたら表に出ようね」
「はーい」

 結局妊娠による休職は依織のキャリアにも、大きく影響した。
 出産前に早期流産しそうになり、産休より早く休むことが必要になってしまった依織は、結局勤めていた大手旅行会社を退職することになった。
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