偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 依織の在籍していた大手旅行代理店もレセプションに参加していたため、依織のことを聞いてみたのだ。
「以前、レセプションで桜葉さんという方とお会いしました。彼女はお元気ですか?」

 東條に対応してくれた男性は軽く目を見開く。
「桜葉をご存じなのですか?」

「ええ。とても前向きな方だったと記憶しております」
 あくまでも以前レセプションで会った時の印象を伝える。
「桜葉は退職しました」
 静かな声で彼は返し、東條は驚いた。

 依織と交際したのは短い期間だったが、彼女が仕事を諦めてしまうようには思えなかったから。

「私は上司だったのですが、彼女は今別の会社に勤めています。日本の伝統文化に関するNPO法人を運営する会社にいます。SNSなどの運用を任されていて、重宝されているらしいですよ」
「そうなんですか」
 ああ、彼女らしい、と思うとつい口元に笑みが浮かんでしまった。

「私も引き留めたのですが、体調のこともあって……」
「体調を崩されたのですか」
 とても心配ではあったが、東條は最後に依織を突き離したときのことを思い出し、自分にそんな権利はないのだと思い返す。

 きっと、もう新しい彼氏ができているだろうし、そのために別れたようなものだ。

 未練があるのは自分だけ。
 そう思うと胸が痛んだ。
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