偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
(桜葉……? 結婚相手の姓じゃないのか?)
 看護師が呼んだ名前は依織の苗字そのままだ。
 妙に引っかかった。

 確かにもうすでに離婚しているという可能性もあるだろう。けれど、なにかがおかしい。

 しばらく東條は外で考えて、病院の通りにある花屋へ足を向ける。依織が帰った姿を確認して再度病院に向かった。

「すみません」
 小児科のナースセンターの窓口で看護師に向かって声をかける。
「桜葉春花ちゃんのお見舞いに来たんですけれど、部屋はどちらになりますか?」
 そう言って可愛らしい花かごを掲げる。

「あら、春花ちゃん、えーと……七号室ですね。あなたは……」
「親族です。依織は一旦家に帰ると言っていたので」
「ああ、そうなんですね。ご案内します」

 看護師に部屋を案内されると、小さな子どもがベッドですやすやと寝ていた。看護師は点滴の様子などを見ている。

 東條は子どもの足首に巻かれている名前と生年月日が書かれたタグを確認する。
 どう見ても一歳ではなかった。大きさからして二歳くらいだろう。生年月日からも間違いないと確認できた。

(なぜ、誤魔化した?)
 眠っている春花の髪をそっと耳にかけてやる。

 顔立ちは依織にとても似ていて、優しい顔立ちをしていた。髪を耳にかけてやって、東條の手が止まった。
< 88 / 169 >

この作品をシェア

pagetop