男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
第1章
第1話
朝の空気は、夜よりも残酷だった。
人の声。車の音。電車の振動。
世界が普通に動いていることが、私には怖かった。
何事もなかったみたいに朝が来て、何事もなかったみたいに皆が笑っている。
私だけが、置いていかれているような気がした。
駅のホームで、ぎゅっとバッグの紐を握りしめた。
指先が冷えて、感覚が薄い。
大丈夫、大丈夫、大丈夫……。
いつもの呪文みたいに繰り返す。
けれど、それを唱えている間も、胸の奥はずっとざわついていた。