男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
第1章

第1話


朝の空気は、夜よりも残酷だった。


人の声。車の音。電車の振動。



世界が普通に動いていることが、私には怖かった。



何事もなかったみたいに朝が来て、何事もなかったみたいに皆が笑っている。


私だけが、置いていかれているような気がした。



駅のホームで、ぎゅっとバッグの紐を握りしめた。


指先が冷えて、感覚が薄い。



大丈夫、大丈夫、大丈夫……。



いつもの呪文みたいに繰り返す。


けれど、それを唱えている間も、胸の奥はずっとざわついていた。
< 14 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop