男装して逃げた先は、生徒会の王子寮でした。
制服の袖から覗く手が、少し震えている。
震える手を落ち着けるために、深呼吸をしようとした。
でも、うまく息が吸えなかった。
大丈夫。
そう呟こうとして、やめた。
言葉にしたら、逆に崩れてしまいそうだったから。
代わりに、バッグのチャックを開ける。
家から持ってきたもの以外に、配られたばかりの教科書、筆箱。
その中から、手のひらサイズの小さなぬいぐるみのお守りを取り出す。
白いうさぎは少し汚れていて、耳の片方がくたっと折れていた。