結婚したら義母3人と夫の愛人2人が屋敷に住んでいました(全員まとめて追い出します)【短編】
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屋敷の雰囲気は、日を追うごとに悪くなった。
「あなた、二番目のくせに出しゃばらないでくださる? 立場を弁えなさい!」
「私のギュンターは、学生の身で領地運営も屋敷内の管理も手伝っているのよ? 愛人と遊び回っている無能な長男と違って」
「誰が無能ですって……?」
「あら? 実際にアカデミー首席のギュンターのほうが優秀じゃない? 今の時代、生まれた順ではなく実績で後継を決めるべきだわ」
「お黙りなさいっ!!」
第一夫人テレーゼと第二夫人ドロテアの関係は悪化し、二人が言い争うことが多くなった。
これまで側室だからと遠慮していたドロテアだったが、優秀な息子を盾にして一歩引くことはなくなった。
後継者が変わるかもしれないと動揺が広がった。
使用人たちも派閥に分かれて、ギスギスした空気が屋敷を侵食していっていた。
唯一、後継争いに関係のない第三夫人ラヘールだけは呑気に過ごしていたが、彼女名義の屋敷への請求書は雪だるま式に増えていって、家令は頭を抱えていた。
「今日はあたしがアル様と寝るのー!」
「あなたは昨日寝たでしょう? 今夜はわたくしの番よ」
「イヤ! あたしが月のものが来たとき、あんたは順番破って勝手にアル様の寝室に行ったじゃない!」
「あなただって、いつも同じことをやってるじゃない!」
愛人たちも、以前よりいがみ合っていた。
二人とも早く妊娠したくて、アルベルトに毎晩執拗に迫っていた。
果ては媚薬を盛ったり、疲れ果てて帰宅した彼に男性の機能向上効果のある食事を強要したり、妊娠が叶うといわれる怪しい魔術儀式をしたり……。
彼女らの奇行に、アルベルトはだんだんと疎ましく思うようになっていた。
ディアナは、それらをただ見ているだけだった。
今では現当主よりも絶大な信頼を得ている彼女は、粛々と己の仕事をこなすだけ。誰の味方にも付かず、我関せずを貫いた。
たまに意見を求められたら、客観的な見解を述べるだけ。ただ見たものを口にするだけだ。
アルベルトはそれらを「女の揉め事」だと切り捨て、問題を軽視し、全てをディアナ任せにしていたのだった。