結婚したら義母3人と夫の愛人2人が屋敷に住んでいました(全員まとめて追い出します)【短編】

「――さて、お待たせいたしました。次は家門の財政についてです」

「あら、後継の話なんじゃないの?」と、テレーゼが訊く。

「それは今終わりましたから」

 三人の義母が首を傾げているのを横目に、ディアナは家令に帳簿をテーブルに広げさせた。

「実は、我がヨルク家の家計は破産寸前なのです」

「「「はぁっ!?」」」

「まずはラヘールお義母様(おかあさま)。あなたはこの半年で3年分の予算を使い切りました」

「えぇっ!」

「あなた、使い過ぎよ!」

「わたしは正統な権利を要求したまでよ!」

 自由な第三夫人は、湯水の如く予算を使い込んでいた。
 失われたものを取り戻すかのように、ドレスや宝石はもちろん、若い美形の画家や音楽家のパトロンにもなって、それは派手に生活していた。

「次にドロテアお義母様(おかあさま)。ギュンター様をアカデミーの最上級クラスに入れるために、多額の裏金を用意しましたね? これは犯罪です」

 ギュンターはアカデミーに入学して成績が伸び悩み、ストレスから遊びに出ることが多くなって更に成績を落としていた。
 だが、何とかして息子を最上級クラスへ入れたい母親(ドロテア)が賄賂を渡して捩じ込んだのだった。

「まぁ。あんなに優秀だと自慢していたのに?」

「たっ、たまたまよ!」

「全く……。下品な方たちで困るわ。破産はあなたたちがお金を使い込んだからね」

 テレーゼがやれやれと肩をすくめていると、

「最後にテレーゼお義母様(おかあさま)。あなたは、ギュンター様に微量の毒薬を盛り続けていましたね」

 容赦なくディアナ砲が炸裂である。

「な、な、なっ……!」

 彼女はさっきまでの余裕の表情とは打って変わって、動揺で顔全体をぐしゃりと歪ませた。

「ちょと! どういうことよ! 私のギュンターに何をしたの!?」

 ディアナが侍女長に合図をすると、彼女はハンカチに包まれた小瓶を差し出した。

「こちらは命を脅かすものではありませんが、経口摂取した者は頭に霧がかかったかのようにぼんやりして、物事に集中できなくなってしまいます。
 さらに検査をすり抜ける性質を持っていて、非常に厄介な薬です。過去には、乗馬前にこれを盛られて落馬して死亡する事例もございました」

 しかも、この毒薬は希少な素材でできているのでかなり高価な代物だ。テレーゼは短くない期間使用していたので、相当な額になっていた。

「あんたっ! ギュンターになんてものを盛ってたのよ!!」

「うるっさいわね! 次男如きは大人しくしてなさいっ!!」

「お二人とも犯罪者ですね〜。こわ〜い」

「ラヘールお義母様(おかあさま)、あなたも予算が少ない頃にパーティーで人様の金品を窃盗していたでしょう?」

「えぇっ!? なんでそれを……!」

「はぁっ!?」

「もしかして、わたくしの黄金林檎のブローチも盗んだの!? ずっと見つからないのよ!」

 今度は第一夫人の怒りが、第三夫人に向く。第二夫人は激昂し、罵声を浴びせながら第一夫人に掴みかかる。

 再び、修羅場が訪れた。ディアナは笑顔でそれを眺めている。

 少しすると、

「お前たち、領地へ帰るぞ」

 ディアナが事情を説明して密かに呼び戻していた前伯爵が、三人の義母を引き連れて行った。


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