クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「今後のこと?」
「瑞希、もうあの部屋には住めないだろ? 俺もあんなにセキュリティが弱い所に瑞希を住ませたくないんだ」
「……そんなこと言われましても、そんなに住居費にお金はかけられないんです」
「ここに一緒に住まないか? 部屋は一つ空いているし、俺たち月の半分はステイだから、同じ家で暮らしてもそんなに気を遣わないだろ?」
隼人さんの提案はあまりにも唐突で、持っていたマグカップがカタカタと震えた。
「隼人さんと、一緒に……?」
「そうだ。契約期間中なら、周囲に対しても同棲していると言えば不自然じゃない。何より防犯面はここなら完璧だ」
隼人さんはまるでフライトプランを説明するかのような冷静さで続ける。けれど、私を見つめる瞳は、いつになく強い光を感じる。
「でも、それは流石に甘えすぎです。家賃だって払えませんし……」
「金はいらない。俺が心配で瑞希をここに置きたいだけだ」
「えっ」
置きたいと言われて、心臓が飛び跳ねる。それは契約恋人としての義務からなのだろうか。
「お前は怖くないのか? あの部屋に戻って、また誰かが入ってくるんじゃないかと怯えながら眠ることにならないか?」
「それは……」
隼人さんの言う通りだった。
一人で荷物が散乱したあの部屋で寝ると思ったら、恐怖に押し潰されそうになる。
「怖いなら俺を頼れ。遠慮はいらない」
力強い言葉に瞼の奥が熱くなる。
隼人さんは優し過ぎる。
「……どうして、こんなに親身なってくれるんですか? 私が契約恋人だからですか?」
私の問いに、隼人さんが何かを言いかけたように唇を動かしたけれど、すぐにいつもの冷静な表情に戻って、視線をふっと逸らした。
「責任を感じているからだ。瑞希が空き巣に入られたのは、俺の契約恋人をしているからという可能性もある」
「どういうことですか?」
「高月隼人の恋人という立場になれば、良からぬ関心を抱く奴が出てくるかもしれない。もし今回の件が、俺と一緒にいることで引き寄せた災難だとしたら、俺にはお前を守る義務がある」
隼人さんの言葉を聞いて、大きく落胆する。
私は一体何を期待していたんだろう。そうだよね。隼人さんが私を好きな訳ない。私たちはそんな関係じゃないのだから。
「それに、俺の管理下で安全を確保してくれるのが契約恋人として一番効率がいい」
仕事の話をしているような調子で言われ、隼人さんにとって私がどんな存在かわかった。優しくされ過ぎて、隼人さんも私を好きかもしれないと思ったのは、大きな勘違いだった。
そもそも隼人さんが私を選んだのは、絶対に一線を越えない相手だと思ったからだ。だから平気で同じ布団で眠れちゃうんだよね。どう頑張っても私は隼人さんの恋愛対象にはなれないんだ。だったら、こっちだって利用してやる。恋焦がれる隼人さんとどんな形でも一緒に暮らしたい。
「……分かりました。お言葉に甘えて、契約が終了するまではお世話になります」
今日は六月三日で、契約期間は後一ヶ月と十七日残っていた。
「決まりだな。よろしく」
隼人さんに握手を求められ、私はその手をしっかりと握った。
こうして隼人さんとの同居生活が始まったのだった。
「瑞希、もうあの部屋には住めないだろ? 俺もあんなにセキュリティが弱い所に瑞希を住ませたくないんだ」
「……そんなこと言われましても、そんなに住居費にお金はかけられないんです」
「ここに一緒に住まないか? 部屋は一つ空いているし、俺たち月の半分はステイだから、同じ家で暮らしてもそんなに気を遣わないだろ?」
隼人さんの提案はあまりにも唐突で、持っていたマグカップがカタカタと震えた。
「隼人さんと、一緒に……?」
「そうだ。契約期間中なら、周囲に対しても同棲していると言えば不自然じゃない。何より防犯面はここなら完璧だ」
隼人さんはまるでフライトプランを説明するかのような冷静さで続ける。けれど、私を見つめる瞳は、いつになく強い光を感じる。
「でも、それは流石に甘えすぎです。家賃だって払えませんし……」
「金はいらない。俺が心配で瑞希をここに置きたいだけだ」
「えっ」
置きたいと言われて、心臓が飛び跳ねる。それは契約恋人としての義務からなのだろうか。
「お前は怖くないのか? あの部屋に戻って、また誰かが入ってくるんじゃないかと怯えながら眠ることにならないか?」
「それは……」
隼人さんの言う通りだった。
一人で荷物が散乱したあの部屋で寝ると思ったら、恐怖に押し潰されそうになる。
「怖いなら俺を頼れ。遠慮はいらない」
力強い言葉に瞼の奥が熱くなる。
隼人さんは優し過ぎる。
「……どうして、こんなに親身なってくれるんですか? 私が契約恋人だからですか?」
私の問いに、隼人さんが何かを言いかけたように唇を動かしたけれど、すぐにいつもの冷静な表情に戻って、視線をふっと逸らした。
「責任を感じているからだ。瑞希が空き巣に入られたのは、俺の契約恋人をしているからという可能性もある」
「どういうことですか?」
「高月隼人の恋人という立場になれば、良からぬ関心を抱く奴が出てくるかもしれない。もし今回の件が、俺と一緒にいることで引き寄せた災難だとしたら、俺にはお前を守る義務がある」
隼人さんの言葉を聞いて、大きく落胆する。
私は一体何を期待していたんだろう。そうだよね。隼人さんが私を好きな訳ない。私たちはそんな関係じゃないのだから。
「それに、俺の管理下で安全を確保してくれるのが契約恋人として一番効率がいい」
仕事の話をしているような調子で言われ、隼人さんにとって私がどんな存在かわかった。優しくされ過ぎて、隼人さんも私を好きかもしれないと思ったのは、大きな勘違いだった。
そもそも隼人さんが私を選んだのは、絶対に一線を越えない相手だと思ったからだ。だから平気で同じ布団で眠れちゃうんだよね。どう頑張っても私は隼人さんの恋愛対象にはなれないんだ。だったら、こっちだって利用してやる。恋焦がれる隼人さんとどんな形でも一緒に暮らしたい。
「……分かりました。お言葉に甘えて、契約が終了するまではお世話になります」
今日は六月三日で、契約期間は後一ヶ月と十七日残っていた。
「決まりだな。よろしく」
隼人さんに握手を求められ、私はその手をしっかりと握った。
こうして隼人さんとの同居生活が始まったのだった。