クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 俺は羽田に到着すると、その足で品川の本社に駆け込んだ。秘書の制止を振り切って、社長室のドアを開けると、白鳥副社長と父がいて、応接コーナーのソファに座っていた。

「隼人、いきなりなんだ」
 父は俺の顔を見るなり、顔をしかめた。
「確認したいことがあって来た。俺の恋人、南雲瑞希の自宅に空き巣が入った」
 父は驚いたように眉を上げたが、その表情が芝居のように見えた。
「それは気の毒に」
「俺に圧力をかける為にやったのか?」
「どうして私がそんな犯罪をするんだ。バカなことを言ってるんじゃない」
「バカなことだと! 彼女を傷つけるようなことがあったら絶対に許さないからな!」
 怒りを込めてテーブルを叩くと、カチンとコーヒーカップが揺れた。
「隼人くん、落ち着きなさい。お父様がそんなことをする訳ないじゃないか」
 白鳥が宥めるような口調で割って入る。父の前ではいつも温厚な仮面を被っている。
「じゃあ、父じゃないなら、白鳥副社長、あなたですか?」
 鋭く睨むと一瞬、目が泳ぐ。
「まさか。いくら綾音と隼人くんを結婚させたくても、そんな乱暴なことはせんよ」
「副社長じゃないと信じていいんですね?」
「もちろんだ」
「……分かりました。今日のところは信じますが、彼女に危害を加えることがあったら俺は絶対に許しませんから」

 白鳥を射抜くように見据えると、父が俺を睨んだ。

「隼人、副社長に失礼だぞ。樹が亡くなってから、副社長には苦労を沢山かけているんだ。この一年、スカイクレスト航空が何とかやってこれたのは副社長のおかげなんだぞ。ミスター・スターリングとの交渉も樹の後を引き継いでやってくれているんだ」

 父の言葉にカアッと頭に血が上る。
 スターリングのような投資家と手を組んで会社を切り売りしようとしているのがまだわかっていない。それ所か白鳥を功労者扱いするのが許せない。

「父さん、どうして俺の言葉を信じないんだ。スターリングは会社を切り売りすることしか頭にないと忠告しただろう? 会社がなくなるぞ」
「確かにスターリング氏が買収した会社で、そのような末路を辿った所もあるが、うちは違う。そんなことにはならない。白鳥副社長が良い条件で交渉してくれているんだ。そもそも、この話は樹が持って来たんだぞ。本当だったらその意志を継いで、お前がスターリング氏と交渉するべきではないのか?」
 父の言葉に奥歯が軋むほどの怒りが込み上がる。
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