クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
俯いて、最もな理由を考えていると、綾音は容赦なく追撃してくる。
「南雲さん、確かあなたのお父様、家出中でお金に困っていますよね。お母様は心臓が悪くて大変ね」
まさか私の事情を知っていると思わず、顔を上げると綾音が口の端を上げた。
「どうして知ってるのかって顔ね。先日、空港のカフェでお父様と会っていましたよね。私、偶然、南雲さんと同じカフェにいたのよ」
綾音は勝ち誇ったように笑う。
あの時、同じカフェに彼女がいたなんて、全く知らず、背筋が冷たくなる。
「執行猶予期間が終わっているとはいえ、父親が横領で捕まったなんて、高月社長が聞いたら、さぞ悲しむでしょうね。高月キャプテンの名誉だって傷つくわよ」
綾音が正面から睨んでくる。
契約書を持つ、指先が震える。
「ねえ南雲さん、本当は隼人にお金で雇われただけなんでしょ? だったら隼人から手を引いてくれないかしら。もちろん、謝礼はたっぷり払うわよ」
蔑むような視線を向けられて、私の中で何かが弾けた。
「……違います。私は隼人さんにお金で雇われていません」
綾音の目の前で契約書を引き裂き、テーブルに叩きつけた。
「これは、ただの悪ふざけで作った書類です。隼人さんの悪戯です」
この場を乗り切るにはそう言い張るしかない。しかし、綾音は全く動じず、手元のノートパソコンの画面をこちらに向けた。
「じゃあ、この契約書の画像データ、社内メールで全社員にばら撒いても問題ないわよね」
画面には、鮮明に撮影された契約書の写真が表示されていた。
「やめて下さい! こんなことをして何の意味があるんですか?」
「隼人からあなたを引き離すためよ。父親が犯罪者の女だなんて、高月家に相応しくないわ。隼人は将来スカイクレスト航空の社長になる男なのよ。あなたは、彼の輝かしいキャリアの『汚点』でしかないのよ」
汚点という言葉がグサリと胸に突き刺さる。
反論できなかった。綾音の言う通りだ。隼人さんはいつかこの会社を背負って立つ人。私のような人間が隣にいれば、必ず彼の足を引っ張る。
「私なら、隼人の役に立てる。でも、あなたは何ができるの?」
悔し涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「創立記念パーティーで私は隼人との婚約を発表します。だから、それまでに隼人と別れて。そうすれば、契約書のことも、南雲さんのお父様のことも私の胸の内側に留めておくわ」
冷酷な条件を突きつけられ、絶望の中で頷くしかなかった。
隼人さんと一緒にいられないのなら、せめてパイロットでいる自分を失いたくなかった。
「南雲さん、確かあなたのお父様、家出中でお金に困っていますよね。お母様は心臓が悪くて大変ね」
まさか私の事情を知っていると思わず、顔を上げると綾音が口の端を上げた。
「どうして知ってるのかって顔ね。先日、空港のカフェでお父様と会っていましたよね。私、偶然、南雲さんと同じカフェにいたのよ」
綾音は勝ち誇ったように笑う。
あの時、同じカフェに彼女がいたなんて、全く知らず、背筋が冷たくなる。
「執行猶予期間が終わっているとはいえ、父親が横領で捕まったなんて、高月社長が聞いたら、さぞ悲しむでしょうね。高月キャプテンの名誉だって傷つくわよ」
綾音が正面から睨んでくる。
契約書を持つ、指先が震える。
「ねえ南雲さん、本当は隼人にお金で雇われただけなんでしょ? だったら隼人から手を引いてくれないかしら。もちろん、謝礼はたっぷり払うわよ」
蔑むような視線を向けられて、私の中で何かが弾けた。
「……違います。私は隼人さんにお金で雇われていません」
綾音の目の前で契約書を引き裂き、テーブルに叩きつけた。
「これは、ただの悪ふざけで作った書類です。隼人さんの悪戯です」
この場を乗り切るにはそう言い張るしかない。しかし、綾音は全く動じず、手元のノートパソコンの画面をこちらに向けた。
「じゃあ、この契約書の画像データ、社内メールで全社員にばら撒いても問題ないわよね」
画面には、鮮明に撮影された契約書の写真が表示されていた。
「やめて下さい! こんなことをして何の意味があるんですか?」
「隼人からあなたを引き離すためよ。父親が犯罪者の女だなんて、高月家に相応しくないわ。隼人は将来スカイクレスト航空の社長になる男なのよ。あなたは、彼の輝かしいキャリアの『汚点』でしかないのよ」
汚点という言葉がグサリと胸に突き刺さる。
反論できなかった。綾音の言う通りだ。隼人さんはいつかこの会社を背負って立つ人。私のような人間が隣にいれば、必ず彼の足を引っ張る。
「私なら、隼人の役に立てる。でも、あなたは何ができるの?」
悔し涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「創立記念パーティーで私は隼人との婚約を発表します。だから、それまでに隼人と別れて。そうすれば、契約書のことも、南雲さんのお父様のことも私の胸の内側に留めておくわ」
冷酷な条件を突きつけられ、絶望の中で頷くしかなかった。
隼人さんと一緒にいられないのなら、せめてパイロットでいる自分を失いたくなかった。