クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「な、なんで、そうなるんですか!」
 正面を向いていた隼人さんが、ゆっくりとこちらを向き、私を見つめた。
「フロリダの訓練所で、ノーズギアが脱落してパニックになっていたお前を助けた副操縦士が俺だからだ。お前は五年間、俺を探していたそうだな」
 なぎさから全部聞いていたんだ。
 隼人さんの罠にかかった。仕事中じゃなかったら、この場から逃げ出している。でも副操縦士として、コックピットから離れる訳にはいかない。もしかして隼人さんはそれがわかっていて、この話題を振ったんだろうか。
 じわじわと悔しさが込み上げて来て、私は唇をぎゅっと噛んだ。

「……ズルイ。今、そんな話をするなんて。職権乱用です」
「瑞希が素直に認めないからだ。綾音に脅迫されたんだろう?」
 低く、有無を言わせない絶対的な声に頷くしかなかった。この人に隠し事をするなんて無理だったんだ。だけど、気づいてくれたことが嬉しくて、視界が涙で歪む。
 私は震える声で本音を口にした。
「……はい。契約恋人のことと、父の横領のことを言われて……私は隼人さんの汚点になると」
「バカだな。そんなこと気にしていたのか。瑞希が汚点になるわけないだろう」
「だって!」
「俺は言ったはずだ。お父さんのことで負い目を感じる必要は全くないと。もう罪は償っているんだ。それでもごちゃごちゃ言う奴は俺が黙らせる。瑞希は汚点じゃない。俺にとってかけがえのない大切な人だ」
 隼人さんの言葉に胸が熱くなる。
「……仕事中に、泣かせないで下さい。この先、乱気流がありますよ」
「おっと、そうだったな」
 隼人さんが正面を向き、気象レーダーを確認する。
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