クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「可能な限り、雲を避けるぞ」
隼人さんがそう言った直後、機体がガタガタと激しく揺れ始める。フロントガラスの向こうに真っ黒な積乱雲が広がっていた。
ベルト着用サインを点灯させ、機内アナウンスをすぐに入れると、隼人さんから指示が飛んでくる。
「南雲、コントロールに変更要請。悪天候回避のためレフト・ヘディング」
「了解」
隼人さんの指示を受け、すぐに手元の送信スイッチを押した。先ほどまでの甘い空気は完全に消え去り、コックピットは緊張感が張りつめている。
「福岡コントロール、スカイクレスト205便。前方に激しい積乱雲を感知。回避のため、左に15度のヘディング変更を要請します」
『スカイクレスト205便、福岡コントロール。了解。ヘディング変更を承認する。周囲に他機はなし、高度は維持せよ』
管制官の指示を復唱すると同時に、隼人さんがコントロールパネルのヘディング・ダイヤルを素早く回す。B787の機体が真っ黒な雲の隙間を縫うように左へ傾き、最初の塊を無事に回避する。だが、気象レーダーの画面はすぐに真っ赤な危険信号が映し出される。
「キャプテン、12時方向に強いエコー(雨雲の塊)です。このままの高度では激しい揺れに遭遇します」
「高度を下げて雲の下を潜るか、あるいは突き抜けるか。瑞希、お前ならどうする?」
正面を見つめたまま、隼人さんが意見を求めてくる。私を信頼してくれているからだと思った。
私は瞬時に、燃料残量と機体の性能、これまでの経験を頭の中で巡らせた。
「雲の下は山岳地帯に近く、視界不良でのアプローチは危険です。一気に高度を上げて、雲の上に抜けるべきです」
「よし、そのプランで行く。福岡コントロールに上昇リクエスト」
「了解。福岡コントロール、スカイクレスト205便。乱気流回避のため、フライトレベル400(4万フィート)への上昇を要請します」
『スカイクレスト205便、フライトレベル400への上昇を承認する』
管制からの許可が下りると同時に、隼人さんは自動操縦を解除し、操縦桿を握りしめた。さらにスロットルレバーを力強く押し込む。ツインエンジンが唸り、機首がぐっと上を向く。激しい雨がフロントガラスを叩きつけ、雷の閃光がコックピットを白く染める。機体が悲鳴を上げるように揺れた。
「速度、乱気流浸入速度をキープ。上昇率、良好!」
私は激しく揺れる計器の数字を大声で読み上げて、機体の正確な状態を隼人さんに伝え続けた。すると、次の瞬間、視界を遮っていた真っ黒な雲が嘘のように左右に割れた。
フロントガラスの向こうに飛び込んできたのは、息をのむほどに美しい青空だった。機体の揺れがピタリと静まり、安定した飛行へと戻る。
「雲の上に出ましたね」
私はシートに背中を預け、大きく息を吐き出した。
「見事な判断だったぞ。南雲副操縦士」
隼人さんがヘッドセットを少しずらし、私を誇らしげに見つめていた。
機長として私の判断を認めてくれたことが嬉しくて、笑みが浮かぶ。
「ありがとうございます。そろそろ福岡空港へのアプローチですね」
「ああ、フライトの最後の仕上げといこう」
隼人さんにそう言われ、私は福岡への降下開始に入る機内アナウンスを入れた。そして定刻通りに福岡空港に着陸し、復路は私が操縦を担当した。
隼人さんがそう言った直後、機体がガタガタと激しく揺れ始める。フロントガラスの向こうに真っ黒な積乱雲が広がっていた。
ベルト着用サインを点灯させ、機内アナウンスをすぐに入れると、隼人さんから指示が飛んでくる。
「南雲、コントロールに変更要請。悪天候回避のためレフト・ヘディング」
「了解」
隼人さんの指示を受け、すぐに手元の送信スイッチを押した。先ほどまでの甘い空気は完全に消え去り、コックピットは緊張感が張りつめている。
「福岡コントロール、スカイクレスト205便。前方に激しい積乱雲を感知。回避のため、左に15度のヘディング変更を要請します」
『スカイクレスト205便、福岡コントロール。了解。ヘディング変更を承認する。周囲に他機はなし、高度は維持せよ』
管制官の指示を復唱すると同時に、隼人さんがコントロールパネルのヘディング・ダイヤルを素早く回す。B787の機体が真っ黒な雲の隙間を縫うように左へ傾き、最初の塊を無事に回避する。だが、気象レーダーの画面はすぐに真っ赤な危険信号が映し出される。
「キャプテン、12時方向に強いエコー(雨雲の塊)です。このままの高度では激しい揺れに遭遇します」
「高度を下げて雲の下を潜るか、あるいは突き抜けるか。瑞希、お前ならどうする?」
正面を見つめたまま、隼人さんが意見を求めてくる。私を信頼してくれているからだと思った。
私は瞬時に、燃料残量と機体の性能、これまでの経験を頭の中で巡らせた。
「雲の下は山岳地帯に近く、視界不良でのアプローチは危険です。一気に高度を上げて、雲の上に抜けるべきです」
「よし、そのプランで行く。福岡コントロールに上昇リクエスト」
「了解。福岡コントロール、スカイクレスト205便。乱気流回避のため、フライトレベル400(4万フィート)への上昇を要請します」
『スカイクレスト205便、フライトレベル400への上昇を承認する』
管制からの許可が下りると同時に、隼人さんは自動操縦を解除し、操縦桿を握りしめた。さらにスロットルレバーを力強く押し込む。ツインエンジンが唸り、機首がぐっと上を向く。激しい雨がフロントガラスを叩きつけ、雷の閃光がコックピットを白く染める。機体が悲鳴を上げるように揺れた。
「速度、乱気流浸入速度をキープ。上昇率、良好!」
私は激しく揺れる計器の数字を大声で読み上げて、機体の正確な状態を隼人さんに伝え続けた。すると、次の瞬間、視界を遮っていた真っ黒な雲が嘘のように左右に割れた。
フロントガラスの向こうに飛び込んできたのは、息をのむほどに美しい青空だった。機体の揺れがピタリと静まり、安定した飛行へと戻る。
「雲の上に出ましたね」
私はシートに背中を預け、大きく息を吐き出した。
「見事な判断だったぞ。南雲副操縦士」
隼人さんがヘッドセットを少しずらし、私を誇らしげに見つめていた。
機長として私の判断を認めてくれたことが嬉しくて、笑みが浮かぶ。
「ありがとうございます。そろそろ福岡空港へのアプローチですね」
「ああ、フライトの最後の仕上げといこう」
隼人さんにそう言われ、私は福岡への降下開始に入る機内アナウンスを入れた。そして定刻通りに福岡空港に着陸し、復路は私が操縦を担当した。