クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 隼人さんがステージ袖のスタッフに視線で合図を送ると、巨大なスクリーンに動画が流れた。そこに映った人物を見て、会場の誰もが息を呑む。それは一年前、セスナ機の事故で亡くなった、隼人さんの兄、高月樹常務の生前の姿だった。

『隼人、もしこの動画を見ているなら、白鳥副社長を絶対に信じるな。彼は裏でスターリングと手を組み、スカイクレスト航空を乗っ取ってバラバラに解体しようとしている。それだけじゃない、白鳥は長年に渡って重大な横領も働いているんだ。その証拠はすべて俺が秘密裏にまとめてある。もし、俺の身に万が一のことがあれば、それはおそらく白鳥の仕業だ』

 そこで映像が暗転し、静まり返った会場に「嘘だ! 捏造だ!」という白鳥副社長の狂ったような叫び声が響き、白鳥の隣に座っていたスターリングもしかめっ面を浮かべた。

「捏造ではありません。あなたが長年行ってきた横領の全データも、兄が乗ったセスナ機のエンジンに不正な細工をした決定的な証拠も揃っています。白鳥さん、もう警察のお迎えが来ていますよ」
 マイク越しの隼人さんの声の後、待機していたスーツ姿の捜査員たちが一斉に会場に入って来た。八百名の招待客が見守る中、捜査員たちは白鳥副社長を厳重に囲い込み、その場で逮捕状を執行する。

「嫌あぁぁ! お父様!」
 ステージから駆け下りた綾音が白鳥副社長に近づこうとするが、別の捜査員たちに素早く取り押さえられる。
「離して! お父様の近くに行かせてよ! こんなの捏造よ!」
 見苦しく叫ぶ彼女にもまた逮捕状が突きつけられる。
「白鳥綾音さん、あなたを南雲瑞希さん宅に対する住居侵入及び、窃盗の教唆で逮捕します。署までご同行願います」
「嘘よ。何のことよ!」
「白鳥綾音、往生際が悪いぞ。事件当日、現場近くの防犯カメラにしっかりと姿が映っているし、実行犯とやり取りしたメールも残っているんだ」
 ステージ上の隼人さんがマイク越しに口にした。
 完全に逃げ道を失った綾音は、真っ青な顔でガタガタと震え出し、捜査員に会場の外に連れて行かれる。
 そしてスターリングも無言で会場を出て行った。
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