クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない


「南雲、機内アナウンスにサービスが短くなることを入れておけ」

 新人の言葉を聞き流す機長も多いなか、ブリーフィングでの若林さんの不安を汲み取った指示に驚いた。高月キャプテンは、厳しいだけではなく細かい気配りができる人のようだ。

「了解しました」

 私は機内アナウンスを始め、大分付近で天候が荒れる為、機内サービスを早めに切り上げることと、着陸の際、多少の揺れが予想されるが、安全運航に支障がないことを丁寧に伝えた。

「それでは皆様、福岡空港までのひとときをごゆっくりお過ごし下さい」

 アナウンスを終えると、高月キャプテンが親指をぐっと上げて良かったということを伝えて来た。
 高月キャプテンが指示した通りのアナウンスが出来たことにほっとする。

「高月キャプテンは新人CAの言葉にもちゃんと耳を傾けるんですね」

 気が緩み、ついそんな言葉が出た。
 前を向いたまま高月キャプテンが口を開く。

「機長として当然だ」

 そう答えた横顔が照れくさそうに見えて、思わず頬が緩む。
 今だったら五年前のことを聞ける気がする。

「あの、私、自社養成でパイロットになったんですけど、訓練所はフロリダで、それで、初めてのソロフライトで大変な目にあって」
「吐いたか?」
「いえ、その、ノーズギアが」

 そう言いかけた時、電子チャイムが鳴り、モニターにトレイを持った宮本さんが映る。私は中央コンソールのスイッチを操作し、コックピットのロックを解除した。
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