クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「そろそろ大分上空だ。気を引き締めろよ」
コーヒーを飲み終わった高月キャプテンがサングラスを外す。露わになった二重の切れ長の目がこれから突っ込む分厚い雲を鋭く睨んでいた。そして予報通り機体は揺れ始める。
「キャビンへのベルトサイン点灯。サービスの終了、確認取れました」
私は揺れに備えてショルダーベルトを締め直しながら報告した。
「了解」
高月キャプテンの落ち着いた声が響き、オートパイロットを解除して、降下が始まる。
分厚い雲に入った瞬間、翼が軋み、激しい振動に襲われた。フロントガラスを叩く雨粒は怒号のようだった。
『SKC111、福岡タワー。風は20度から35ノット、最大瞬間風速は45ノット。ウィンドシアの報告あり。ランウェイ34、着陸を許可する』
緊張した管制官の声がした。ウィンドシア――急激な風向・風速の変化。最悪の場合、機体を地面に叩きつけられることもある現象だ。
「許可確認。速度、安定しません」
フロントガラスに投影されたHUD(ヘッドアップディスプレイ)の中で、速度が狂ったように上下している。160ノット(時速約300キロ)から、一瞬で145ノット(時速約270キロ)へ急減速し、機体が胃の浮くような感覚とともに数秒で数十フィートも吸い込まれるように落下した。
「大丈夫だ。パワーで抑え込む。フラップ・サーティー」
高月キャプテンがスラストレバーを細かく動かし、風の呼吸に合わせてエンジンの出力を調整する。
滑走路端を通過した瞬間、猛烈な右からの横風が機体を左へと押し流そうとした。
「機首が流されます! センターラインから外れる!」
「させるか」
接地寸前、高月キャプテンが左のラダーペダルを鋭く蹴り込み、同時に操縦桿を右に倒して風に浮き上がろうとする右翼を抑えた。
200トンの巨体が滑走路上で正面を向き、ドンッという確かな衝撃と共にメインギアがアスファルトを捉えた。雨に濡れた滑走路では、あえて衝撃を与えて接地させるファーム・ランディングが安全なのだ。
水煙を上げながら、787が滑走路を駆け抜ける。
コーヒーを飲み終わった高月キャプテンがサングラスを外す。露わになった二重の切れ長の目がこれから突っ込む分厚い雲を鋭く睨んでいた。そして予報通り機体は揺れ始める。
「キャビンへのベルトサイン点灯。サービスの終了、確認取れました」
私は揺れに備えてショルダーベルトを締め直しながら報告した。
「了解」
高月キャプテンの落ち着いた声が響き、オートパイロットを解除して、降下が始まる。
分厚い雲に入った瞬間、翼が軋み、激しい振動に襲われた。フロントガラスを叩く雨粒は怒号のようだった。
『SKC111、福岡タワー。風は20度から35ノット、最大瞬間風速は45ノット。ウィンドシアの報告あり。ランウェイ34、着陸を許可する』
緊張した管制官の声がした。ウィンドシア――急激な風向・風速の変化。最悪の場合、機体を地面に叩きつけられることもある現象だ。
「許可確認。速度、安定しません」
フロントガラスに投影されたHUD(ヘッドアップディスプレイ)の中で、速度が狂ったように上下している。160ノット(時速約300キロ)から、一瞬で145ノット(時速約270キロ)へ急減速し、機体が胃の浮くような感覚とともに数秒で数十フィートも吸い込まれるように落下した。
「大丈夫だ。パワーで抑え込む。フラップ・サーティー」
高月キャプテンがスラストレバーを細かく動かし、風の呼吸に合わせてエンジンの出力を調整する。
滑走路端を通過した瞬間、猛烈な右からの横風が機体を左へと押し流そうとした。
「機首が流されます! センターラインから外れる!」
「させるか」
接地寸前、高月キャプテンが左のラダーペダルを鋭く蹴り込み、同時に操縦桿を右に倒して風に浮き上がろうとする右翼を抑えた。
200トンの巨体が滑走路上で正面を向き、ドンッという確かな衝撃と共にメインギアがアスファルトを捉えた。雨に濡れた滑走路では、あえて衝撃を与えて接地させるファーム・ランディングが安全なのだ。
水煙を上げながら、787が滑走路を駆け抜ける。