クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
札幌に来たら家出中の父を探そうと思っていた。
父が出て行ったのは、私がフロリダに旅立った日だった。最後に会った父はいつもと何も変わらず、ただ「体に気をつけて」と優しい言葉をかけてくれた。
帰国して、父のことを聞いた時は信じられなかった。なぜ父が出て行ったのか、何度も母に聞いたが教えてくれなかった。だから私は父の家出にも、母と離婚したことにも納得していない。
パイロットになってからは地方都市に行く度に父を探し歩いている。お酒の好きな父のことだから、どこかの居酒屋にいるような気がするのだ。特に札幌は昔、父が単身赴任をしていた土地だから、他の地方よりも縁が深い。
フライトの復習後、制服からカーキ色のマウンテンパーカーに濃紺のデニム姿に着替えた私は、大勢の人で行き交う繁華街を歩いた。
道路の脇には灰色に染まった雪の塊が残っていて、四月でもまだ札幌は寒いと実感する。
有名なニッカウヰスキーの看板が掲げてあるすすきのビル前まで来ると、ポケットからスマホを取り出し、地図アプリを確認する。
父が単身赴任中に通っていた居酒屋がこの近くにあるらしい。教えてくれたのは、菜々美だった。
実家の押し入れから父の古い財布が出て来て、その中に札幌の居酒屋のレシートが入っていたそうだ。調べるとその居酒屋はまだ存在していたから、新千歳のフライトの時に足を運ぼうと決めていた。
地図アプリに従って暗い裏通りに入ると、目に刺さるようなピンクのネオンの看板が並んでいて、思わず両眉が上がる。どれも怪しげな雰囲気の店で、客引きの男たちが店の前を通る男性に次々と声をかけていた。
周囲に女性の姿はなく、場違いな所に来たと感じた。
大通りまで戻ろう。そう思った時、前から歩いて来たオレンジ色のダウンを着た金髪の若い男に声をかけられる。
「お兄さん、遊んでいかない? いい子いるよ」
「えっ」
お兄さんと言われて、目を見開くと、男が私の顔をまじまじと見て、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
父が出て行ったのは、私がフロリダに旅立った日だった。最後に会った父はいつもと何も変わらず、ただ「体に気をつけて」と優しい言葉をかけてくれた。
帰国して、父のことを聞いた時は信じられなかった。なぜ父が出て行ったのか、何度も母に聞いたが教えてくれなかった。だから私は父の家出にも、母と離婚したことにも納得していない。
パイロットになってからは地方都市に行く度に父を探し歩いている。お酒の好きな父のことだから、どこかの居酒屋にいるような気がするのだ。特に札幌は昔、父が単身赴任をしていた土地だから、他の地方よりも縁が深い。
フライトの復習後、制服からカーキ色のマウンテンパーカーに濃紺のデニム姿に着替えた私は、大勢の人で行き交う繁華街を歩いた。
道路の脇には灰色に染まった雪の塊が残っていて、四月でもまだ札幌は寒いと実感する。
有名なニッカウヰスキーの看板が掲げてあるすすきのビル前まで来ると、ポケットからスマホを取り出し、地図アプリを確認する。
父が単身赴任中に通っていた居酒屋がこの近くにあるらしい。教えてくれたのは、菜々美だった。
実家の押し入れから父の古い財布が出て来て、その中に札幌の居酒屋のレシートが入っていたそうだ。調べるとその居酒屋はまだ存在していたから、新千歳のフライトの時に足を運ぼうと決めていた。
地図アプリに従って暗い裏通りに入ると、目に刺さるようなピンクのネオンの看板が並んでいて、思わず両眉が上がる。どれも怪しげな雰囲気の店で、客引きの男たちが店の前を通る男性に次々と声をかけていた。
周囲に女性の姿はなく、場違いな所に来たと感じた。
大通りまで戻ろう。そう思った時、前から歩いて来たオレンジ色のダウンを着た金髪の若い男に声をかけられる。
「お兄さん、遊んでいかない? いい子いるよ」
「えっ」
お兄さんと言われて、目を見開くと、男が私の顔をまじまじと見て、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。