クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 十分後、涼介さんが手配してくれたタクシーが到着した。
 高月キャプテンに連れられてバーの外に出ると、後部座席に押し込まれるように乗せられた。 
 出費を避ける為に、歩いてホテルまで帰りたかったが、今夜は仕方がない。
 短く息をつくと、キャプテンも隣に滑り込んでくる。同乗すると思わなかったので、視線が険しくなる。

「一緒に乗るんですか?」
「同じホテルだからな。俺と一緒なのは嫌だと思うが、我慢しろ」
 やっぱり高月キャプテンは自分勝手だと思いながら、窓の方を向き、窓枠に肘をついた。
 キャプテンが行き先を告げ、タクシーが走り出す。
 窓の外の繁華街の煌びやかなネオンが流れていくのを眺めながら、ホテルまでの我慢だと自分に言い聞かせる。だけど、ムカムカして仕方ない。一秒だって一緒にいたくない。

「……悪かったよ」
 信号でタクシーが停車した時、不意に低い声がした。
「えっ」
 思いがけない言葉に窓から視線を外すと、気まずそうに視線を泳がせる高月キャプテンがいた。
「涼介さんによく言われるんだ。俺は正論ばかりで、デリカシーがないって」
 反省している様子の高月キャプテンが意外過ぎる。
「とにかく悪かった。だから明日のフライトまでには機嫌を直してくれ」
 謝ってくれたのは、機長として副操縦士の私が不機嫌になるのが困るのだと思った。
「見くびらないで下さい。仕事に私情は挟みません。高月キャプテンが父の仇だったとしても、コックピットに入った瞬間は全て忘れます」
 高月キャプテンがじっと私の顔を見て、それから感心したように、ふっと口角を上げた。
「それは、それは、立派なプロ根性だな」
「当然です。多くのお客様の命を預かっているんですから」
 切れ長の瞳が驚いたように見開かれた。
 当たり前のことを言っただけなのに、なんでそんな表情をされるのかわからない。
「明日のフライトも頼りにしているよ」
 そう口にした高月キャプテンがまた優しい表情を浮かべるから調子が狂う。こっちは怒っているっていうのに。
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