クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
***
「明日のフライトも頼りにしているよ」
そう告げると、南雲はツンとすました顔のまま、気まずそうにまた窓の外へと視線を戻した。どうやらまだ父親のことで怒っているらしい。
窓ガラスに映る彼女の凛とした横顔を見ながら、五年前の記憶が鮮明に蘇る。
当時、俺は常務を務める兄の代理として、フロリダの訓練所を視察していた。
事件が起きたのは南雲が乗る訓練機が離陸した直後だった。俺は滑走路上にノーズギア(前輪)が落ちているのを見つけ、心臓が冷えるのを感じながら、タワー(管制塔)に駆け込んだ。
タワーにいた彼女の教官は血相を変えて、今日が初めてのソロフライトだと言った。
管制官を通じて状況を伝えられた南雲は、明らかにパニックに陥っていた。その動揺は、無線越しでも痛いほど伝わって来た。俺自身、訓練生時代の初フライトで教官が意識を失うという、あり得ないトラブルを経験したことがあるから、南雲が抱く恐怖心はよくわかった。
『ゆっくり、喋って下さい』
無線から今にも泣き出しそうな彼女の声が聞こえて、俺は早口の英語で捲し立てる教官からマイクを奪った。
「私はスカイクレスト航空の副操縦士だ。ノーズギアがなくても、無事に着陸はできる。まずは落ち着きなさい」
南雲は俺が語りかけると徐々に冷静さを取り戻し、指示通りの操縦をして着陸した。
機首を滑走に擦りながら火花を上げながら走っていく訓練機の姿を見ながら、彼女の無事を強く願った。そして訓練機は滑走路の真ん中で止まり、心から安堵した。
幸い火災が起こることもなく、地上で控えていたスタッフがすぐにコックピットにいる彼女を救出した。
すぐに彼女が運ばれた訓練施設内の診療所に駆けつけたが、意識を失ったままの彼女と言葉を交わすことはなく、予定のあった俺は後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。それ以来、彼女が無事にパイロットになれただろうかと、時折思い返していた。
「明日のフライトも頼りにしているよ」
そう告げると、南雲はツンとすました顔のまま、気まずそうにまた窓の外へと視線を戻した。どうやらまだ父親のことで怒っているらしい。
窓ガラスに映る彼女の凛とした横顔を見ながら、五年前の記憶が鮮明に蘇る。
当時、俺は常務を務める兄の代理として、フロリダの訓練所を視察していた。
事件が起きたのは南雲が乗る訓練機が離陸した直後だった。俺は滑走路上にノーズギア(前輪)が落ちているのを見つけ、心臓が冷えるのを感じながら、タワー(管制塔)に駆け込んだ。
タワーにいた彼女の教官は血相を変えて、今日が初めてのソロフライトだと言った。
管制官を通じて状況を伝えられた南雲は、明らかにパニックに陥っていた。その動揺は、無線越しでも痛いほど伝わって来た。俺自身、訓練生時代の初フライトで教官が意識を失うという、あり得ないトラブルを経験したことがあるから、南雲が抱く恐怖心はよくわかった。
『ゆっくり、喋って下さい』
無線から今にも泣き出しそうな彼女の声が聞こえて、俺は早口の英語で捲し立てる教官からマイクを奪った。
「私はスカイクレスト航空の副操縦士だ。ノーズギアがなくても、無事に着陸はできる。まずは落ち着きなさい」
南雲は俺が語りかけると徐々に冷静さを取り戻し、指示通りの操縦をして着陸した。
機首を滑走に擦りながら火花を上げながら走っていく訓練機の姿を見ながら、彼女の無事を強く願った。そして訓練機は滑走路の真ん中で止まり、心から安堵した。
幸い火災が起こることもなく、地上で控えていたスタッフがすぐにコックピットにいる彼女を救出した。
すぐに彼女が運ばれた訓練施設内の診療所に駆けつけたが、意識を失ったままの彼女と言葉を交わすことはなく、予定のあった俺は後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。それ以来、彼女が無事にパイロットになれただろうかと、時折思い返していた。