クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「な、なんのことですか」
「川崎のマンションに配達に来ていただろう。俺の顔を見て逃げ出したよな?」

 背中に冷や汗が流れ、鼓動が速くなる。何とか誤魔化さなければ。

「ひ、人違いだと思いますよ」
「これは南雲だろ?」

 高月キャプテンがスマホを見せる。画面にはエレベーターに乗っている私の姿が映っていた。サングラスとヘルメット姿だけど、コックピットでもサングラスをかけていたので、高月キャプテンは気づいたのだろう。もう言い逃れはできない。

「エレベーター内の監視カメラの映像だ。警備会社に頼んで見せてもらったんだ」

 監視カメラの映像を見せられるとは思わなかった。高月キャプテンの用意周到さに両眉が上がる。

「監視カメラの映像って、ずるいです!」
「褒めてくれてありがとう」

 キャプテンがニッと勝ち気な笑みを浮かべる。

「褒めてないです。契約恋人を引き受けないと、会社に副業を報告するんですか?」
「そういうことになるだろうな」
「人の弱みにつけ込んで酷い」
「怖い顔をするな。タダでとは言っていない。妹さんの学費とお母さんの治療費が必要なんだろう?」
「どうしてそれを……」
「身辺調査をさせてもらった。君が契約恋人に相応しいか知りたかったからな」
 さすが最年少機長になっただけのことはある。パイロットの仕事は準備が大切だ。
「プライバシーを侵害されて、すごく不愉快です」
「報酬として三百万円払う。契約期間は三ヶ月だ」
 驚きの金額に今度は大きく目を見開いた。
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