クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 ホテルに戻ると、エレベーターホールで、同じフライトだったCA三人組と遭遇した。その中には若林さんもいて、私を見るなり目を見開いた。

「南雲さんですよね? どうしたんですか! ドレスアップしちゃって」

 今の私は隼人さんに買ってもらったミモレ丈の赤いドレス姿で、顔も普段より濃いメイクをしている。若林さんが驚くのも当然だ。

「えっと、その」

 何て言おうか迷っていると、隣に立つ隼人さんがいきなり私の肩を抱き寄せた。肩に大きな手のひらと高い体温を感じて、鼓動が速くなる。

「俺たちは知り合いのパーティーに行っていたんだよ」
「……パーティーですか」

 私に向けていた若林さんの視線が鋭くなる。

「そうなの。パーティーに出ていたから、こんな格好で。似合ってないよね」
「また瑞希は自分を卑下するようなことを言って。今夜の君は誰よりも美しいと言っているだろう」

 隼人さんから歯の浮くようなセリフが出て、その場にいた三人組と一緒に私もギョッとした。普段のクールな隼人さんのイメージを完全に崩すセリフだ。

「瑞希、明日の自由時間はサンタモニカでデートしよう。前から瑞希、行きたがっていただろう?」

 サンタモニカ⁉ そんな所に行きたいと言ったことはない。完全に恋人になりきっている隼人さんの演技力についていけない。

「あの、もしかして高月キャプテンと南雲さんはお付き合いを?」

 若林さんの言葉に隼人さんが頷く。

「そうだ。なあ、瑞希?」

 隼人さんが私に視線を向ける。表情はにこやかだけど、瞳の奥にはわかっているよな?という無言の圧力を感じる。

「ええ。恥ずかしいから内緒にしていたんだけど。隼人さん、バレちゃったね」

 こうなったら自棄だと思い、恋人らしく隼人さんに向かって微笑んでみた。すると、隼人さんが僅かに眉を上げ、表情を硬くした。あれ? 私の恋人のふり何か変だった?

「瑞希、部屋まで送るよ」

 エレベーターが到着し、乗り込む。若林さんたちも乗ってくるかと思ったけど、「私たちは大丈夫です」と言われてしまった。同じエレベーターに乗るのが気まずいのかもしれない。
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