クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 エレベーターの扉が閉まり、二人きりになると、私はすぐ隣に立つ隼人さんから距離を取った。

「私、サンタモニカに行きたいなんて言ったことありませんよ!」

 勝手なことを言われて少々ムッとしていた。

「仕方ないだろう。その場のノリだ」
「どうするんですか? 本当に明日サンタモニカに行かないと疑われるじゃないですか」
「じゃあ明日は俺たちの初デートだな」

 初デートという言葉が照れくさくて顔が熱くなった。

「いや、待って下さい。私、デートに行くような服持ってないし」
「服装を気にするなんて、瑞希もやっぱり女だな。せっかくだからロデオドライブで服を買ってやる」

 ロデオドライブと言えば、高級ブランド店が並ぶエリアだ。
 今夜もホテルのブティックで高い服を買ってもらっているのにさらに買ってもらうのは気が引ける。

「いいですよ。そこまでしていただかなくても」
「必要経費だ。今後、君には俺の恋人らしい服装をしてもらわないとならないからな」

 服まで気を遣うのかと思ったら気が重い。しかし、これも仕事だ。もう報酬は頂いているので、お客様の要望には全力で応えなければならない。エアラインパイロットとして、日ごろからお客様を満足させるフライトを心がけている私に妙な闘志が湧いた。

「わかりました」
 私の言葉に隼人さんは嬉しそうに微笑んだ。
< 47 / 143 >

この作品をシェア

pagetop