クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 六郷土手の古いワンルームの部屋に帰ってくると、真っ先にシャワーを浴びて、布団に寝転がった。考えなければいけないことが沢山あるけれど、睡魔には勝てず深い眠りについた。そして夕方、目を覚ました。

 スマホには隼人さんからメッセージが来ていた。
【明日の昼、家に来い】
 短い言葉と一緒に住所が書かれていた。それは川崎ではなく、品川となっていたので小首を傾げる。私が隼人さんと遭遇したのは川崎のマンションだったはずだ。あそこは自宅ではなかったのだろうか? そんなことを思いながら【わかりました】と返信をする。次になぎさからのメッセージを見て、苦笑いが浮かんだ。

【高月キャプテンと付き合っているって本当なの?】
 もうなぎさの耳にも入ったのか。
 今朝の出来事はきっと社内の噂になっているだろう。次の出勤日のことを考えると気が重たくなる。
 肺の奥から深い溜息をつき、ふと気になったことを思い出す。

『契約期間は三ヶ月だ』
 隼人さんは確かに三ヶ月だと言った。なぜ三ヶ月なのだろうか? それくらいの期間なら白鳥親子に結婚を諦めさせられるからだろうか? しかし、恋人として交際するには少し短い気がする。私との恋人契約が終わった後、他の策があるのだろうか? まさか次は契約結婚だなんて言い出さないよね?

 浮かんだ考えを否定するように私は全力で首を左右に振った。
 冗談じゃない。これ以上の注目を浴びるのは絶対に嫌だ。ずっと隼人さんのペースで押し切られて来たけど、明日はこちらの要求も絶対に通す。

 ふと綾音が言っていた『樹さん』という言葉が過る。もしかして、一年前にセスナ機の事故で亡くなったうちの会社の常務、『高月樹』のことだろうか? 隼人さんと同じ苗字だから近い関係かもしれない。

 スマホで高月樹氏のことを検索すると、39歳で亡くなったと出ていた。あまりの若さに胸が痛んだ。死亡原因は記憶していた通り、セスナ機の墜落事故で、樹さんが自分でセスナ機を操縦していたようだった。調布飛行場から大島へのフライトの途中で事故は起きたようだったが、その日の天候を見ると晴天で穏やかな天気だったので、何となく引っかかるものを感じるが、これ以上はわからなくスマホを手放した。
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